いのちのきらめき
駅を降りると、沢山の人で溢れかえっていた
七夕祭りをやっているようで、みんながゆっくりと街を歩く
今日は美術館に行く予定があったが、七夕祭りの中を突っ切り目的地へ向かうのはなんだか憂鬱だった
若い母親が、小さな子供と短パンを履いた夫と笑顔で歩いていて、自分にはきっとこういう未来は訪れないんだろうな、とぼんやり思った
浴衣を着たイケメンいないかな、とも思ったが、私はそもそもお祭りのとき引き篭ってる系男子が好きだったことを思い出した
そして今日は大きな地震があった
そのとき丁度予備校にいて、S字フックで引っ掛けられたユゴーの石膏がプラプラと揺れていたのを友達と大笑いしながら眺めていた
笑っている場合でもないが、非日常って本当に笑うしかない
絵を描き粘土を捏ねくりまわした後の頭はいつものような動きはしてくれず、地震が起こったんだ!と咄嗟に理解することはできずに、先生の「これ俺が揺らしたんだよ」を一瞬本気で信じた
予備校を出ると、相変わらず街は七夕祭りで賑わっていて、大勢の人、食べ物の匂い、湿気、その全てに嫌気がさしていた
私は駅で警備をしている警察官と同じ表情になりながらホームを歩き、そして電車に揺られた